2007年10月16日

ぶどうのプディングと保存食

もうすでに旬も終わりに近付きつつあるのですが、前回に引き続き葡萄の話題です。

moshato
(写真はマスカット)

その発祥地ではないものの、古代からワイン造りを続けてきたギリシャ人は葡萄という植物(実だけでなく)を丸ごと活用する術に長けています。春の新芽は料理やピクルスに、初夏の未熟な果実の絞り汁(アグリーダ)は酸味料として、夏から秋にかけて熟した果実は食用(そのまま、又は加工して)やワイン醸造に、そして実の終わってしまった蔓は焚き木にしたり籠を編んだり…と、ほとんど捨てるところがないのです。
さらに付け足すと、ワイン用の葡萄の絞り滓は蒸留酒にされるし、ワインそのものはワインビネガーに、ワインの底に溜まった澱はチーズに利用されたりもするのですから、葡萄がいかにギリシャの食文化において重要かというのがわかります。

前置きが長くなりましたが、ギリシャの秋の訪れを感じさせるのが、葡萄を使ったお菓子です。葡萄の収穫のピークは夏の終わりから秋の初め頃。ワイン造りに携わるのは男性が多いですが、女性達は葡萄の絞り汁(ムストス)を使ってお菓子や保存食作りに取り掛かります。その中でも、最も親しまれているのがムスタレヴリアというプディングと、ムストクルラというビスケットでしょう。ムストクルラは写真を撮っていないので、今回はムスタレヴリアをご紹介します。

moustalevria2

9月頃になると、スーパーでも初物のムストスで作ったムスタレヴリアやムストクルラが山積みにされていたりして、何となく買ってみたくなります。市販のものは、砂糖が少し足してあったりするんですけど...。


興味のある方の為に、簡単に作り方を説明します。
葡萄の汁は、ただ絞っただけでは灰汁が強いので、木灰またはアスプロホマと呼ばれる土(注1)を少量加えて澄ませてから漉し、発酵を止める為に煮ておきます。この時、用途や好みによって煮詰めておき、下準備の終了です。

moustos
朝市では、こんな風に下処理済みのムストスが売られていたりもします。

ムスタレヴリアの材料はシンプルで、本来は葡萄の汁と小麦粉だけです。語源の通りだと葡萄の汁と小麦粉(ムスト+アレヴリ)ですが、セモリナ粉を使ったり、また最近ではコーンスターチを使う人の方が多いかもしれません。作り方のバリエーションを挙げていくときりがないので省きますが、基本的には葡萄の汁5:粉1ぐらいの割合でしょうか。粉に葡萄の汁を少しずつ加えて溶き、鍋に入れてかきまぜながら加熱します。粉っぽさがなくなり、透き通ってきたら火から下ろし、容器に流しいれます。お好みで、砕いた胡桃や胡麻、シナモンなどをトッピングして出来上がりです。

moustalevria
Μουσταλευριά

ムスタレヴリアは写真のもののように柔らか目に作ってプディングとして食べてもいいし、硬く作って日干しにしたら冬に向けての保存食にもなります。


petimezi保存食と言えば、もっと幅広く使える食材がこちら。ムストスをトロリとした蜜状になるまで煮詰めて作ったペティメジ(注2)です。上で紹介したムスタレヴリアやムストクルラもペティメジで作ったりしますが、それ以外にもヘルシーな甘味料としてとても便利なものです。蜂蜜と並んで、このペティメジも古代ギリシャから使われていたのでしょうね。シンプルにヨーグルトやパンにトッピングしても美味しいし、料理に使っても面白いです。

注1:英語ではフラーズアース。石鹸作りなどにも使われるもので、汚れを吸着する働きがあるそうです。
注2:ギリシャのペティメジは葡萄が主ですが、他の果物で作ったシロップも指します。関連記事→ザクロの自家製ペティメジを使ったドレッシング

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sevam_a at 04:44コメント(10)トラックバック(0)レシピ | おすすめ食品・食材  このエントリーをはてなブックマークに追加

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コメント一覧

1. Posted by 裕美   2007年10月16日 19:29
こんにちは!

ブドウを使ったお菓子??とすぐにはピンと来ず、好奇心いっぱいで読みました。Salahiさんのブログって、雑誌のエッセイのようです。楽しくて洒落ているのね。市場のサインもエキゾチックでいいです…ギリシャ文字って、美しいですね。

ペティメジって、見たことがないです!ギリシャって、「目先を変えて、こんな物も作るのね」というレベルを超えている気がします。食材に対して私が持っている常識を、根底から覆されると言いますか…
2. Posted by melocoton   2007年10月17日 15:17
これは珍しいですね! 
昔から、その土地で簡単に育つ植物を色々加工して食べた食文化っていいですよね。

体にもよさそうです。

イギリスは...

ジャガイモは結構最近になって南米から来たものだし、ナンなのかしら? 乳製品??

ブラックプディング、ポッティッドシュリンプなんかでしょうかね(汗)。
3. Posted by salahi   2007年10月17日 17:01
裕美さん、こんにちは。

「葡萄のプディング」と言っても、どんなものだかあまり想像がつきませんよね^^;
ペティメジは中東辺りに同じようなものがありますし(ザクロやデーツのシロップも)、ヨーロッパでもあるみたいですよ。イタリアでは(地域によって違うのかもしれませんが)Sabaと呼ばれる葡萄シロップがあるそうです。

>ギリシャ文字
理数系苦手な私は、最初こちらに来た時アレルギーが出そうでした^^;
4. Posted by salahi   2007年10月17日 17:11
melocotonさん、こんにちは。

このお菓子、かなり歴史が古そうです。
伝統的なギリシャ料理は肉少な目、野菜・豆・穀物中心でヘルシーですよね。

イギリスの伝統食品も面白そうです^^
5. Posted by mocataro   2007年10月17日 21:09
へえぇ!ほおぉ!とうなりながら読んでしまいました^^

今年は巨峰ジュースをたくさん作ったので、これを使ったらもしかしてプディングができるのかしら?と無謀な考えがちらっと頭をよぎったり(でもお砂糖やクエン酸を加えてるからダメですね)

何でも最初に考えた人、作り出した人はすごいと思いますけど、ぶどうに関しては長い歴史の中でギリシャ人の知恵が総動員されてる感じですね。
6. Posted by salahi   2007年10月18日 20:57
mocaさん、こんにちは。

巨峰ならすごく風味のいいのができそうですね。これに適した果汁は微妙に発酵しかけのものです♪

そうそう、砂糖やクエン酸を入れたシロップも少し作ってみたんですが、やはり風味が違うのでファンタ味にはなりませんでした...。
7. Posted by ポメマル   2007年10月21日 22:00
salahiさん こんばんは。

葡萄をこれだけ徹底的に利用するんですね。
私の知人が新潟でワイナリーをやってて葡萄は捨てるところがないとは聞いていたのですがここまでは活用はしてないでしょうね。
今度葡萄の新芽のピクルスのことを教えてあげようかしら。

葡萄の汁は生を搾ってから火を入れるんですね。私がジュースを取る時は逆で煮てから搾ってました。
冷蔵庫にまだ少し巨峰のジュースが残ってます。ムスタレヴリアにしてみようかしら。
ただ飲むのも能がなさすぎですね。

8. Posted by salahi   2007年10月22日 16:03
ポメマルさん、こんにちは。

知人の方がワイナリーをされてるんですね。どんな風に葡萄を使われているのか、とても気になります!

こちらでは葡萄と言うと踏んだり機械で圧搾したりという方法です。古代からの方法、そのままですね。たまに義父がムストス(葡萄の汁)をくれますが、ほとんどそのままで飲んで、発酵しかけたのはこのお菓子にしたりします。
9. Posted by カロリーナ   2008年03月20日 20:47
すごい!
ギリシャのぶどうの活用術!
日本人は実を食べて終わりですが、食べ終わったつるまで活用するなんて!
すばらしい生活の知恵ですね。ほうれん草の根っことかもここのレシピを知らなければ捨てちゃってました。
無駄なく利用するその知恵を見習いたいものです。
10. Posted by salahi   2008年03月21日 17:46
カロリーナさん、こんにちは。

そうですよね。私も、ギリシャの食文化を知るまでは、葡萄って実を食べたりワインにしたり...ぐらいかと思ってました。

物が溢れる豊かな時代に生きていると、食べ物を無駄にしてしまうことが多いですね。野菜を丸ごと活用したりするのは手間がかかるけど、なるべく無駄を出したくないものです。

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