ギリシャのごはん

ギリシャ料理のレシピと、ギリシャで私が作っているごはんの記録。

タグ:クレタ島料理

載せるのがすっかり遅くなってしまいましたが、夏休みのプロジェクトのひとつが「クシノホンドロス」を作ることでした。

2018.09.07 xinochondros
Ξινόχοντρος

クシノホンドロスとは、クレタ島の伝統的な保存食。粗く挽き割りにした小麦と発酵乳から作られます。ギリシャ各地で作られる「トラハナ」(※)の一種であるとカテゴライズされることも多いですが、クレタ島独特のもので、さまざまな料理に使われます。

これを手作りしたいなとずっと思っていたのですが、なんとなくタイミングを逃していたり、乳を自然に発酵させるプロセスに若干不安があったりで早○年……恐ろしく長い月日が流れていました。で、たまに巡ってくるやる気の波に乗ってようやく着手できたというわけ。

材料はシンプルで、小麦と乳、塩だけ(プラス、オリーブオイルを加える人も)。使うのは牛乳よりも羊乳や山羊乳の方が独特な風味があり適しています。理想としては生乳を使うのがいいんでしょうが、入手が難しいのでスーパーで売ってる山羊乳で作りました。生乳だと一回沸かして殺菌するわけですが、市販のは高温殺菌されているのでパックのまま、発酵するまで置いてみました。カビたりしないよう一日何度かパックを振って混ぜ、匂いを嗅いで様子をチェックします。気温などによりますが、大体数日〜1週間ぐらいで発酵乳になります。匂いを嗅いでみて、不快感のないヨーグルトみたいな発酵臭がすればオッケー(なはず)。

……と、こんな感じで作ってみましたが、この記事を読んで食べてみたいと思った方は、菌が生きてるタイプのヨーグルトを種菌として加え発酵させる方法をお試しください。

発酵食品を作っていて心配になるのは、やはり安全面ですよね。発酵乳に関しては、ヨーグルトを種菌として使うならともかく、ただ置いといて発酵させるのは腐ってるのとどう違うのかというのが一番気になります。これについてはかなりいろいろ調べてみたんですが、結果、よくわかりませんでした。安全と言い切れないものなので、やめといた方がいいですよ〜としか言いようがないみたいな。私も責任は取れませんので、この記事を読んで真似してみたい方は自己責任でお願いします。伝統的な作り方と聞いたものとは微妙に違いますが、上記のようにヨーグルトを作る要領でやってみたり、ヨーグルトと乳を混ぜる方法でもよさそうです。


2018.08.19 wheat berries
(ずいぶん前に買った、この麦を使ってしまいたかった)

さて、無事に発酵した山羊乳を2つに分け、ひとつは市販のプリグリ(挽き割り小麦、バルガー小麦、ブルグル)、もうひとつは戻してフードプロセッサーでごく粗く砕いた小麦粒を使い作ってみました。クレタ島の伝統的な作り方ではホンドロスと呼ばれる粗挽きの小麦を使うのですが、プリグリだと粗挽きのものでもまだ細かい&粒が揃いすぎてる気がするのです。ごく粗く挽けるグレインミルがあればよかったのだけど、持ってないので苦肉の策で、そのままだと刃が傷みそうなので戻してからフードプロセッサーにかけるという方法に。結果、あまり上手く砕けなかったのですが、無理やり続行します。

挽き割り小麦を3〜4倍量の発酵乳と合わせ、汁気を吸ってドロドロになるまで、焦げつかないようかき混ぜながら煮ます。

2018.08.19 xinochondros1

プリグリの方と、


2018.08.19 xinochondros2

フードプロセッサーで砕いた丸麦の方。

汁気がなくなるまで煮えたら、出来たての状態で食べる場合もあるらしいのですが、大体は保存食として乾燥させます。火から下ろしたら、手でまとめられるぐらいに冷まし、適当な量をとって乾燥させます。


2018.08.19 xinochondros

この時、細長く握ったような形だったり、真ん中を凹ませた平丸型だったり好きな形にまとめて乾かすのが一般的ですが、乾いていくのと同時に細かく割ってもいいです。今回はほとんどを握った形で乾かしたのですが、やっぱり煮る時になかなか崩れず少し使いにくかったです。細かい方が使用量の調節もしやすくおすすめ。


2018.09.07 xinochondros2

プリグリで作ったものの完成品。比較的細かく割ってみました。

2018.09.07 xinochondros1

丸麦を砕いた方の完成品。

食べてみた感想は、市販のプリグリ(挽き割り小麦)で作ったものよりも自分で丸麦を砕いて作った方が断然おいしかったです。


しっかり乾燥させたクシノホンドロスは長期保存できます。空気が乾燥しているなら布袋で保存もできるけど、虫がつく心配もあるので、一番いいのは密閉して冷蔵庫か冷凍庫に入れることでしょう。うちは場所がないので密閉容器に入れて常温で置いてますが、低温のオーブンで仕上げ乾燥と熱処理することにより防虫対策をしています。

クシノホンドロスは煮込みに入れたりさまざまな料理に使えるわけですが、長くなってしまったので調理例はまた次回にご紹介します。


【関連記事】

※トラハナについてはこちらに詳しく書いています。興味のある方はご覧ください


※2022年の夏に、山羊乳ヨーグルトを種菌にしてクシノホンドロスを作った時の記事です。


※クシノホンドロスの調理例に関しては、いっぱい載せてますのでブログ内検索をご利用ください。


ギリシャごはん普及活動に、ご協力お願いします
にほんブログ村 料理ブログ 各国料理(レシピ)へ
人気blogランキングへ

冷たいカクテルを飲みたくなる季節。
うちで作るカクテルは、シンプルな材料を混ぜるだけの低アルコールなロングカクテルが基本。軽いスナックをつまみながら、夏の午後をゆるゆる過ごすのって最高ですよね〜……って、すでに夏休みモードですが、ギリシャの学校はあと10日ほどで休みなんですよ。早すぎ!

19 kavroumadakia
Καβρουμαδάκια με Γραβιέρα Κρήτης

今年、気に入ってよく食べているおつまみはクレタ島のチーズ入り「カヴルマダキァ」です。ぷっくりしたリング型の乾パンっぽいものなんですが(もうちょっと大きいサイズのはカヴルマデス)、グラヴィエラチーズ入りのがスーパーやデリで売ってるのを見かけて気になっていたのです。
しかし、カヴルマダキァについて調べてみても作り方などの情報はほとんどなく、市販されてる製品の情報ばかり。これはあまり家庭で作られることはなく、お店で買うものなのかも?ちなみにギリシャでは塩味のビスケットや固焼きパンの類はチーズ入りや野菜入りなどいろんなのがベーカリーで売っていますが、家庭では甘いタイプの方がよく作られるようです。


2018.05.10 kavroumadakia1
1次発酵済みの生地。

2018.05.10 kavroumadakia2
成形したところ。雑でOK。

そんなわけで、原材料から推測して作ってみたのがこちら。カリッとするまで焼かず柔らかいものが子供たちに人気で、焼いた途端に半分以上が消えてしまうほど。ただのひとくちチーズパンの状態ではカヴルマダキァと言っていいものかは怪しいですが、止まらないおいしさです。


05 kavroumadakia2

つまみ食いはほどほどに……しっかり乾燥するまで焼いたものは結構保存もきくので、作っておくと便利ですよ。


ちなみにカクテルですが、最近よく作ってるのはラキに自家製ベルガモットシロップと炭酸水を加えたもの。画像のはそれをちょっとアレンジしてコールドブリューコーヒーを足し、ガーニッシュに生姜のスライスをのせてみました。


ギリシャごはん普及活動に、ご協力お願いします
にほんブログ村 料理ブログ 各国料理(レシピ)へ
人気blogランキングへ

続きを読む

前回の続き。自家製のアパキはそのままで全部食べてしまいたいのをぐっと我慢して、パスタにも使ってみました。

2017.09.20 pasta1

モダンなクレタ料理レストランで結構よく見かけるのが、スキュフィフタというパスタとアパキの組み合わせです。


2017.11.12 skioufichta

クレタ島の伝統的なパスタのひとつスキュフィフタはカヴァテッリに似たもので、バターやチーズでシンプルに食べるのですが、煮込みなどと合わせるのも好きです。近年は普通のスーパーでも乾燥のスキュフィフタをよく見かけるようになり、レストランで使っているのもこれですが、この形状の乾燥パスタは硬い部分が残りがちなのがちょっと難点。作るのがとても簡単なパスタなので、最近ではもっぱら手作り派です。


2017.09.20 pasta2

まずは、間違いない組み合わせのアパキ&マッシュルーム。味的にはアパキは小さく切ってマッシュルームとともに炒めた方が味の絡みがいいのですが、見た目重視でスライスしたのをソテーしてのせました。


2017.09.20 pasta3

使ったのはチキンのアパキです。マッシュルームとの相性のよさは言うまでもないですね。そして、むっちりとしたパスタ……書いてたらまた食べたくなりました。



2017.11.12 skioufichta me apaki ke kolokytha1

もう1品は、ポークのアパキとバターナッツかぼちゃ。チーズは少し酸味のあるクシノミジスラ(※)を使い、かぼちゃの甘みを引き締めています。


2017.11.12 skioufichta me apaki ke kolokytha2

ハーブも入れてますが、セイボリーかオレガノか……?何だったのか忘れてしまいました。記事は早めに書いておかないとだめですね。

※ミジスラはリコッタチーズに似たフレッシュチーズ。クレタ島のクシノミジスラ(サワーミジスラ)は、発酵による独特の酸味があります。


ギリシャごはん普及活動に、ご協力お願いします
にほんブログ村 料理ブログ 各国料理(レシピ)へ
人気blogランキングへ

すっかり載せそびれていましたが、作るタイミングも逃していたものシリーズ(笑)去年の秋、やっとやる気が出て何度かこれを作っていました。

2017.09.19 chicken apaki
Κοτόπουλο Απάκι

タイトルにあるように、クレタ島の伝統的な保存食です。豚肉のフィレまたはロースなど脂のない部位で作られるスモークミートで、ハーブやワインビネガー(ワインを加える場合も)でマリネした後、香りのよい木やハーブの煙でじっくり燻して作られます。

ギリシャの伝統では冬に豚を〆てさまざまな加工品を作りますが、このような農民の知恵的なものが、現代ではグルメ食品として扱われていて、モダンギリシャ料理でもよく使われています。このアパキもそのひとつで、ひと昔前までは物産展やクレタ食品店などでしか見なかった気がしますが、今はスーパーでも普通に売られています。


2017.09.19 chicken apaki2

そして、伝統的な豚肉を使ったアパキ以外のバリエーションも。「これはチキンで作っても美味しそうだな〜」と考えていたのですが、クレタの人も同じことを考えていたようで、何年か前からウサギやチキンのも見るようになりました。

味付けのさじ加減はもちろん作り手によって変わってくるものの、しっかりしたスモーク風味にハーブの香りやビネガーの酸味で独特な味わい。ラキまたはチクディアと呼ばれるクレタ島の火酒にぴったりのおつまみであるほか、オムレツなど料理に使ってもおいしいです。


2017.09.19 chicken apaki1

まず作ってみたのがチキンヴァージョン。アパキはフィレで作るものなので、鶏の場合は胸肉を骨・皮なしで。これは燻す前の状態です。


2017.09.16 herb salt

ハーブソルトにはシミ島で摘んできたセージやクレタ島のディクタモなども入れました。ちなみにディクタモはハーブティーとして飲むのが普通で、基本的に料理には使わないようですが、モダンギリシャ料理では使われているのをたまに見かけます(料理に入れても存在感はない気がしますが)。


2017.09.24 chicken apaki

そのままで食べるのがおいしいと思うのだけど、レストランでは軽くソテーしたのを出しているところが多いです。ある日のおつまみに作ったこれは、自家製粒マスタードとオレンジで仕上げてみたのだったかな?他にも何か入れた気がするけど……。


2017.11.10 pork apaki
Χοιρινό Απάκι

こちらはポークのアパキ。フィレは高いのでケチってロースかモモ肉(どちらか失念)ですが、その場合も脂のほとんどない部分を細長い形に切って使います。暖炉に吊るして燻せるといいのだけど、無いので簡易スモーカーに網をセットして燻しています。


2017.11.10 apaki pita sandwich

夫が持ち帰ってきたミニピタパンが沢山あったので、サンドイッチにしてみました。焼いたピタパンを開いて、マスタード、アパキ、トマト、スライスオニオン、カイエンペッパー(グラヴィエラチーズも入れてたかも?)。


アパキを使ってパスタも作ったのだけど、長くなるので次回に続きます。


ギリシャごはん普及活動に、ご協力お願いします
にほんブログ村 料理ブログ 各国料理(レシピ)へ
人気blogランキングへ

月末に作ったギリシャ粗食。

2015.05.29

この日のメニューは、前回作りそこねたフェンネルのパイと、ひよこ豆の煮込み。

今でこそ肉の消費量がとても多いギリシャですが、歴史的には苦難と貧困の時代が長かったこと、宗教的には動物性の食品が禁止される期間があることから精進料理のメニューも充実しています。
普通に料理を作って、そういえば今日の料理は動物性食品を何も使ってなかった……なんてことも。ギリシャの普段の食卓にはチーズが欠かせないので、献立としては完全な菜食ではないのですが。


ひよこ豆の煮込みは、以前もバリエーションをいろいろ載せてますが、ギリシャ料理での定番の組み合わせのひとつ「ひよこ豆となす」に、ズッキーニやポテトも加えたもの。うまみ調味料的に、控えめな量のトマトを加え、鍋で煮込むとおとなし目の味に仕上がります。

ちなみに、茹でたり煮込みに加えるズッキーニはヘタを落とさないのが好きです。本体よりも、ヘタが好きなので(笑)
鮮度のいいズッキーニなら、ぜひヘタごと煮込んでみてください。


2015.05.29 marathopita1

パイはフライパン焼き。これからの季節にオーブンを使うのは暑いので、こういうのがいいですね〜。

フェンネルのパイと言ってもいろいろあるようですが、私がずっと作りたいと思ってたのは以前クレタ料理レストランで食べた「ハニア風」や「スファキア風」と呼ばれるタイプでした。そんなに手間がかかるわけでもなく、なんてことはないものでも、やる気やタイミングが合わないと数年経ってしまいます。


2015.05.29 marathopita2

作り方はとても簡単で、玉ねぎ(またはねぎ)とフェンネルの葉(ういきょう)をオリーブオイルで炒めたフィリングを、シンプルな生地(※)で包んで薄くのばしてフライパン焼きするだけ。中国のローピンや長野県のお焼きと似た系統の素朴なパイです。
フィリングはあらかじめ火を通さず生のままだったり、ほうれん草や他のハーブもブレンドする場合も。

※生地は、以前載せた手打ちフィロ生地と同じでも、小麦粉と水と塩少々だけのでもいいです。


2015.05.29 pagoto syko-rakomelo

上の献立だけなら精進メニューだったのだけど、卵と乳製品を使ったおやつも。秋に冷凍したいちじくがまだ少し残ってたので、いちじくとラコメロのアイスクリームを作りました。

お酒たっぷりで濃厚な大人の味ですが、甘味は蜂蜜だけなので比較的ヘルシーです^^


ギリシャごはん普及活動に、ご協力お願いします
人気blogランキングへ
にほんブログ村 料理ブログ 各国料理(レシピ)へ

↑このページのトップヘ