ギリシャのごはん

ギリシャ料理のレシピと、ギリシャで私が作っているごはんの記録。

タグ:チーズ

北風が運んできた寒気が、そういえば秋の味覚のあれやこれやをまだ食べてなかったな……と思い出させてくれた今週。

2024.11.24 manouri chieesecake
あっという間に旬が過ぎるわけでもないのですが、また忘れないうちにとマルメロをとりあえずひとつだけ買ってきました。

先月ぶどうを買ったのだけど、さすがにこの時期のはそのまま食べるにはいまいちだったので、とりあえず砂糖を少し加えて煮てあったのです(こんな「とりあえず」が多い日常です)。

これにペクチンの多いマルメロを加えジャムにしようという計画をようやく実行したわけですが、マルメロの半分はくし切りにして一緒の鍋に放り込み、よくよく煮てピンクに染まったところで取り分けておきました(※1)。

ジャムはまた後日お菓子に変身させるとして、砂糖煮のマルメロはケーキに。
ピンクのマルメロを焼きこんだケーキが好きでよく作るのですが、少し前にマヌリチーズをつまみ食いしてたらチーズケーキの気分になってたので、この組み合わせでギリシャ風なチーズケーキを焼いてみました。

チーズケーキの祖先のようなお菓子は、古代ギリシャの時代から食べられていたと言われます。現代のギリシャにはあまりチーズケーキのイメージはないかと思いますが、フレッシュチーズを使ったお菓子は各地に見られ、特に小さなチーズタルトのようなお菓子はクレタ島やキクラデス諸島でさまざまなバリエーションがあります。

チーズケーキに一番近いと思われるギリシャのお菓子はシフノス島のメロピタ。蜂蜜パイもしくは蜂蜜ケーキを意味する名前ですが、地元産のフレッシュチーズ(アンソティラ)に蜂蜜や卵など加え焼き上げた素朴なお菓子です。

メロピタは結構な量のフレッシュチーズを使うので、「チーズ+蜂蜜」の組み合わせでチーズケーキに落とし込んだのが今回のレシピです。チーズはアンソティロでもよかったのですが、中部〜北部ギリシャで作られるマヌリチーズ(※2)にしたのは上に書いた理由と、日本でも売っていると聞いたことがあるので。今でも売っているのかはわからないし、あっても高そうですが、一応レシピを記しておきます。


2024.11.24 manouri chieesecake1
メロピタのイメージなので、蜂蜜とシナモンをかけて盛りつけてみました。
ここへさらに刻んだナッツを散らしてもいいし、もちろん何もかけずそのまま食べてもいいです。


※1 マルメロは砂糖を加え加熱すると徐々に色が赤っぽくなってきます。どれぐらい深く色づくかは砂糖の量や加熱時間に比例するようです。

※2 マヌリ(マヌーリ)は、フェタチーズを作ったあとのホエイに羊乳や山羊乳、クリームを足して作られるソフトチーズ。中部〜北部ギリシャで生産され、PDO(原産地呼称保護認定)を受けています。マイルドでミルキーな味わいのマヌリチーズはイタリアのリコッタにも似ていて、デザートチーズとして食べたり、お菓子や料理にも。そのまままたは軽く焼いてサラダのトッピングにするのもポピュラーです。

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ギリシャに住んでかなり長くなりますが、こんなに猛暑日が続く夏はあまりなかった気がします。

2024.07.23
暑いキッチンであまり肉などを触りたくなくて、週の大半はベジタリアンかそれに近いメニュー。簡単なパスタやサラダや軽い煮込みだったり、さっと作れるメゼ(おつまみ)のようなもので済ませることが多いです。

昨日はそろそろ旬が終わりのさくらんぼを市場で買ってきたので、料理にも使いたいなぁと思いタラガニチーズとあわせてサガナキにしました。

日本でもちらほら売ってるらしいタラガニチーズ。伝統的なチーズであるかのように紹介されることも多いのですが、実は比較的歴史は浅く、十数年前に登場したペロポネソス半島メシニアのチーズです(追って、イピロスのメーカーも製造するように)。タラガニとは、メシニア地方の方言で「羊飼いの外套」を意味するそう。元々は羊乳だけで作られていたらしいですが、市販されているタラガニの原材料を見ると牛乳に羊乳・山羊乳の混合と表記されています。アラホヴァのフォルマエラやキプロスのハルミ、ヒオス島のマステロに少し似た感じで、加熱しても溶けずキュッキュッとした食感が特徴です。塩気はハルミほどきつくなくて、マイルドな味わいなので好きな方が多いと思います。

タラガニはそのままでも食べられますが、焼いて食べるのが定番とされるチーズのひとつです。熱々の焼きたてにシンプルにレモンを絞ってもいいし、チャツネのようなソースを添えて食べたり、サラダのトッピングにしたり、さまざまな料理に加えたりといろいろ楽しめます。

今回は私と娘用にタラガニとチェリーのサガナキ、夫にはトマトと玉ねぎと青唐辛子で簡単に作ったソースのサガナキにしました。遅い昼ごはんに作ったのだけど、どちらもワインやチプロ(ポマースブランデー)がとても進むこと間違いなしです。

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ほんの少しだけフレッシュチーズが余ったので、手っ取り早くパスタで消費。

2024.01.04 orzo
フレッシュチーズというとリコッタチーズやカッテージチーズがよく知られますが、ギリシャにもさまざまなフレッシュチーズが作られます。
料理やお菓子などに、一番幅広く使われるのはアンソティロスとミジスラ。見た目も味わいも似通ったこの2つのチーズはイタリアのリコッタのようにホエイを再利用して作られますが、微妙な違いがあります。

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・アンソティロス:羊乳または山羊乳チーズを作ったあとのホエイを使う。フレッシュな状態での水分量は最高70%、固形分に含まれる乳脂肪は最低65%。

・ミジスラ:ホエイの種類に指定はなく、牛乳の場合も。フレッシュな状態での水分量は最高70%、固形分に含まれる乳脂肪は最低50%。

厳密にはこのような決まりがあるようですが、ホエイを使わず乳に酸(家庭で小規模に作られる場合はレモンやビネガー、少し変わったものではイチジクの樹液など)を加えて作るフレッシュチーズもミジスラと呼ばれたりします。

いずれも乾燥させたタイプがあり、こちらはミジスラの方がよく見かける気がしますが、結構塩気が強いのですりおろしてパスタにふりかけたりする使い方が一般的です。
ちょっと面白い使い方をするのがペロポネソス半島マニの郷土料理のチュフティというパスタで、乾燥ミジスラを茶色くなるまで炒めて加えます。

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2024.01.04 orzo1
前置きが長くなりました。チーズとハーブだけを加えたシンプルパスタは今まで焦がしバターで作ったりもしてたのですが、チュフティみたいに焦がしチーズでやってもよさそうだなと思い試してみたのがこちらです。

チュフティに使うのは乾燥ミジスラだけど、今回手元にあったのはフレッシュなアンソティロ。うちでは多めに余った時は冷蔵庫で数週間乾燥させたりもするのですが、今回は2人分のパスタに使える程度の量だったので、フレッシュチーズでもできるか実験してみることに。塩をしてキッチンペーパーで押して水分を取っただけのを使いました。


2024.01.04 myzithra
フライパンにバター(できれば羊乳か山羊乳のバターがおいしい)を溶かし、チーズを加えます。脂肪分が低いチーズだからか溶けないので、水分が飛ぶにつれポロポロの細かいそぼろ状に。きつね色に香ばしくなるまで炒めたら火から下ろします。

パスタはクリサラキという大麦(クリサリ)の粒を模した形のものを使いました。日本ではイタリアのオルゾまたはリゾーニという名前で売られているはず。なければ他のパスタでもいいです。ギリシャではクリサラキはソースやスープに加え炊くような調理法で作ることがどちらかというと多いですが、今回は普通のパスタのように茹でます。

パスタを茹でている間にハーブを刻みます。このパスタを作る時は数種類のフレッシュハーブを混ぜるのが好きで、パセリ、ディル、スペアミント、バジル、フェンネル、チャービル、タイムなどなど……その時にあるもの何でも、あまりこだわりなく組み合わせて大丈夫です。お好みで葱を少し加えても。
大まかなルールとしては、よく火を通した方が好きなハーブ(ローズマリーやセージ)や、香りがきつく感じるフレッシュオレガノも、私の場合あまりこれには入れません。

パスタが茹であがったら水気を切ってチーズの入ったフライパンにあけ、フレッシュハーブを加え黒胡椒を挽いて和え、味をととのえできあがり。レモンの皮のすりおろしやレモン汁を加えても爽やかでおいしいです。

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この日はパスタのほか簡単なサラダと青菜パイ(ただ単に食べたかった)という献立でしたが、ロースト野菜やポーチドエッグを添えて食べたり、付けあわせとしてもおすすめです。

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アラホヴァ、パルナソス山辺りに縁のある方からフォルマエラチーズをいただきました。うちでは普段買わないチーズなので、食べるのは何年ぶりでしょう?

2023.07.04 saganaki
フォルマエラ(φορμαέλαまたはφορμαέλλα)は、中央ギリシャに位置するヴィオティア県アラホヴァの伝統的なセミハードチーズ。羊乳や山羊乳を原料とするチーズで、約500gの円柱形に作られます。細長い籠に入れて成形するため、ぎざぎざとした模様が特徴的です。
フォルマエラチーズはペロポネソス半島のカラヴリタでも作られますが、アラホヴァのものが特に有名で、PDO(原産地名称保護制度)認証を受けています。

食感はキプロスのハルミチーズやペロポネソス半島メッシニア県のタラガニチーズのようにキュッキュッとした歯応え。そのままでも食べることはできますが、サガナキやグリルなど加熱調理して食べる場合が多いです。

というわけで結局簡単にサガナキで全部消費してしまったのですが、ちょっと甘いソースで食べたい気分だったので、2種類作ってみました。

トップの画像は、セモリナ粉衣のサガナキにチリトマトジャム添え。フォルマエラチーズを厚めにスライスし、さっと濡らしてセモリナ粉をまぶします。きつね色になるまでオリーブオイルで揚げ焼きにしてできあがり。セモリナ粉があったのでそれを使いましたが、コーンミールでもいいですよ。
チリトマトジャムはこれ用にごく少量作ったので適当ですが……トマトと生唐辛子と玉ねぎ少しを刻んで鍋に入れて煮詰め、味つけは蜂蜜と塩を使いました。


2023.06.29
こちらは衣はつけず、フライパンで焼いたサガナキ。ちょっとだけ食べたいなと思ってたら薄めに切れてしまいましたが、もうちょっと厚く切った方がいいです。

フォルマエラは加熱しても溶けないので、衣なしでそのまま焼いても形は保ったままになります。夏らしく桃の簡易ジャムですが、ウゾと粗びきこしょう入りで大人の味に。チリトマトジャムと同じく、甘味は最後に蜂蜜を加えています。

今回は甘いソースというテーマでやってみましたが、シンプルにバターで焼いて唐辛子フレークかパプリカを少し散らしたり、オリーブオイルで焼いてレモンで食べるのもいいし、サラダや料理に加えても楽しめるチーズです。


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自分のためにチーズのサガナキを作ったのって、いつぶりでしょう?

2022.09.28 saganaki
Τυρί σαγανάκι με σταφύλια

チーズのサガナキは夫と次女の好物。特に去年ぐらいから次女の中でブームが来ているようで、もう嫌というほど作らされています。

両手つきの小さなフライパンのことを、ギリシャ語でサガナキといいます。料理名としてのサガナキは、チーズを焼いたものだったり、サガナキで出されるさまざまなメゼ(おつまみ)だったりとかなり幅広いものです。もはやサガナキではなく違う容器で出てきたりもしますが。

ギリシャで一般的なチーズのサガナキは、小麦粉をまぶしたチーズを揚げ焼きにしてレモンを添えたシンプルなもの。
海外のギリシャレストランではファイヤー!して出てくるパフォーマンスがあったり、蜂蜜など加えたモダンギリシャ料理の方がよく知られているところもあるようで、ギリシャの素朴なレストランで頼むと拍子抜けする人も居そう。

と、そんなことを言いつつ今回ご紹介するのは、旬のぶどうをチーズと一緒に焼いたモダンギリシャ料理のサガナキのレシピです。私は果物ってそのままよりも料理やお菓子に使う方が好きなので、チーズにもよくあわせて食べています。

このサガナキは短い調理時間で作れる料理なので、下準備が大事。慌てず済むよう前もって材料はきちんと揃えておき、手早く仕上げて熱々を食べてくださいね。


チーズとぶどうのサガナキ(ティリ・サガナキ・メ・スタフィリア)

材料:(1人分)
グラヴィエラまたはケファログラヴィエラチーズ...1切れ(60g)
小麦粉...適量
ぶどう...60g
ローズマリー...穂先1〜2本
蜂蜜...小さじ1/2
レモン汁...小さじ1
オリーブオイル...大さじ1
黒こしょう...適量

チーズは水にくぐらせ、小麦粉を全体にまぶしつける。余分な粉ははたき落とし、使うまで冷蔵庫に入れておく。

ぶどうとローズマリーは洗って水気を拭いておく。蜂蜜はレモン汁とあわせておく。

2022.09.28 saganaki1
サガナキまたは小さなスキレットを中火で熱し、オリーブオイルをひいてチーズを焼く。底になっている面がきつね色になったらひっくり返して端に寄せ、ぶどうとローズマリーも加える。

2022.09.28 saganaki2
チーズはいじらず、ぶどうとローズマリーは軽く混ぜながら焼く。チーズのもう片面も焼けてぶどうが少し弾けたようになってきたら、蜂蜜とレモン汁を回しかけ、こしょうを挽きかけて火からおろす。

MEMO:このサガナキは少しチーズが溶け出していいので、普通にチーズのサガナキを作る時と比べ薄い衣にしています。
果物は、ぶどうの代わりにネクタリン、いちじく、プラム、洋梨など合いそうなものに変えて作ってもいいです。また、仕上げには蜂蜜とレモンの代わりにバルサミコクリーム(煮詰めたバルサミコビネガー)を少量、細い線状にかけても。


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