ギリシャのごはん

ギリシャ料理のレシピと、ギリシャで私が作っているごはんの記録。

タグ:野草料理

断食期間のはじまりにギリシャ風タコマリネを作りましたが、その時に取り分けておいたタコでもう一品。

2021.03.24 octopus with avronies1
Χταπόδι με αβρωνιές

これこれ。アヴロニェスという野草を市場で見かけたら作ろうと思ってたのです。

オヴリエスやアヴロニェスと呼ばれるこの野草は以前にも何度か紹介しましたが、ギリシャの春の味覚のひとつ。ヤマノイモ属のDioscorea communisのことで、英語ではブラックブライオニー。日本でも英語の名前で知られるようです。

2021.03.24 avronies
全草にサポニンを多く含むため毒草として注意が必要なのですが、ギリシャ、トルコ、フランスなどいくつかの国々(の、一部地方かも?)では春に出てくる新芽を食用とします。ここアテネでは青空市場で売っていますが、見た目が野生アスパラに少し似ているのと、時には混ぜて売られていたこともあるので気をつけた方がいいかもしれません。新芽の毒性はどれぐらいのものかは知りませんが、アスパラだと生で食べちゃうこともあるので……。

タコと一緒に煮込んだこの一品は、クレタ島の郷土料理。クレタでは魚介類をさまざまな野菜とあわせて調理するようで、これもそのひとつです。

試してみる方はあまりいないような気はしますが、作り方を簡単に説明しておきます。

2021.03.24 octopus with avronies2

タコとブラックブライオニー新芽の煮込み(フタポディ・メ・アヴロニェス)

材料:
タコ
玉ねぎ
オリーブオイル
赤ワイン
ブラックブライオニーの新芽
塩、こしょう
ワインビネガー(好みで)

タコはギリシャ流によく叩いておいたものか、一度冷凍したものを使用(どちらも身をやわらかくする効果があります)。よく揉み洗いし、扱いやすい大きさに切り分けます。

玉ねぎを薄切りかみじん切りにし、たっぷりのオリーブオイルとともに鍋に入れて火にかけます。色づかせないよう弱火で炒め、やわらかくなったらタコを加えオイルを絡めるように軽く炒めます。

赤ワインを回しかけ、ふたをして弱火でタコがやわらかくなるまで煮込みます。

タコを煮ている間にブラックブライオニーの下ごしらえをします。アスパラのように硬い部分を折って除き、適当な長さに切ります。3分ほど下茹でし、水気を切ります。味を見て苦味が強いようなら少し水にさらすといいです。

タコがやわらかくなったらブラックブライオニーを加え混ぜ、塩(味を見て必要なら)、こしょうします。全体がくったりやわらかくなり、汁気が少なくなるまで煮込んでできあがり。火から下ろす少し前に、お好みでワインビネガーを適量加えて味をととのえます。

***************
この料理、たっぷりのオリーブオイルとワインでやわらかく煮込んだタコのうまみとコクは言うまでもなく、アヴロニェスのほろ苦さも絶妙なんです。
本来は海でとってきたタコと野山であつめたアヴロニェス、自家製のオリーブオイルやワインをあわせた素朴な田舎料理なのでしょうけど、こういうのがしみじみおいしいんですよね。


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食材的に、一番わくわくするのが春。
伝統食への関心の高まりとともに需要も増えたのか、昔と比べて野草の類が手に入りやすくなったのは嬉しいことです。

2014.03.12 avronies1

中でも毎年楽しみにしているのが、野生のアスパラ(ギリシャ語でスパラギァσπαράγγια)やオヴリェス(οβριές。アヴロニェスαβρωνιέςとも呼ばれる)です。
この2つは全く違う植物なのでまとめてしまうのはいかがなものかと思うのですが、よく一緒に売られているし、ギリシャ人でも混同している人が結構多いそう。
上の写真はオヴリェスなのですが、アスパラが2本ほど紛れているのが見えますか?生えてる場所は違うはずだけど、束にしている時に紛れ込んだのでしょう。よく見ると形が少し違っていて、オヴリェスは穂先が粒々でハート型の葉っぱがついています。

また、日本の山菜であるシオデ(Smilax riparia)と間違えられることもあるようですが、オヴリェスはTamus communis(現在はDioscorea communisとなった模様)。ヤマノイモ科のつる性植物ブラック・ブライオニーで、新芽を食用とします。なお、アスパラと違いオヴリェスは毒があるので必ず加熱調理して食べます。ギリシャの市場ではどちらも「ファルマコ(薬)だよ〜」という謳い文句とともに売ってたりしますが、確かにこのようなほろ苦い野草はデトックス効果があるように感じます。

関連記事

2014.03.12 avronies2

ギリシャ風には、シンプルに茹でて(煮て)オリーブオイルとレモンまたはビネガーで食べたり、オムレツなど卵料理や煮込みにもされます。
茹でる場合は茹で汁も捨てずに飲むのがポイント。
旬であるというのも理由ですが、オヴリェスは復活祭前のメガリ・サラコスティ(四旬節、断食期間)に好んで食べられるホルタ(野草)のひとつです。動物性の食品などを断つこの時期の食事には穢れを落とす意味もあるようなので、オヴリェスのようなホルタを取り入れた粗食を取り入れていると、なんとなく清らかな気分になります。


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野草料理といえば、和食アレンジも私的には外せないものです。
オヴリェスの炊き込みご飯は、ほろ苦さが春らしくて好き♪オヴリェスの量がそれほどなかったのでニンジンや油揚げも入れましたが、たっぷりのオヴリェスと塩だけで炊くのもいいですね。


2014.03.12 avronies4

ある日の昼ご飯に作った、オヴリェスと油揚げの卵とじうどん。
オヴリェスは「苦い!」と言うほどでもないのですが、ほんのりとした苦味には少し甘めの油揚げと卵がよく合います。


2014.03.12 avronies5

たたきも作ってみました。
どぶろくの肴にちびちびつまみ、ほんの少し残したのは〆のご飯にのっけて……。なかなか春の日本へ山菜を食べに行けないのが残念ですが、ギリシャ和食もこれはこれでいいものです^^


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ブログネタ
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前回の記事で登場した小魚のフリット。

2009.02.26 atherina savoro

食べきれなくてお持ち帰りした分は、サボロ(ギリシャ風・揚げ魚のマリネ)にしました。こうしておくと数日間置いておいても大丈夫だし、二度美味しい
酸っぱいのが平気な方は是非お試し下さい♪

ちなみに今回のはトマト入り。前に載せたレシピに小さいトマトを1個足しただけで、基本的な作り方は同じです。(小麦粉を入れる場合は、これも炒めてから)ニンニクとローズマリーを軽く炒めたところに、すりおろしたトマトを投入。果肉が崩れて生っぽさがなくなったらビネガーと水又は白ワインを加えて軽く煮ます。
__________________________

妹が来た時には、野草やハーブ、日本では入手しにくい野菜などを使った料理も外せません。

2009.02.25 avronies1

到着の日に朝市で物色してたら、野草を扱う店でこれを発見しました。
“アヴロニア”(ツタのような植物)と書いてあるけど、野生アスパラのようにも見えるし...。

2009.02.25 avronies2

とにかく買って帰り、よく見たらアヴロニェス(アヴロニアの複数形)とアグリア・スパラギァ(野生アスパラ、下の2本)の両方が混ぜてありました。

アヴロニァはギリシャでは古代から食用や薬用に珍重されている野草のひとつで、学名はBryonia dioica。地方によってはオヴリェス、アグリオコロキサなど別名で呼ばれることもあります。また、クレタ島には違う種類の(Bryonia cretica)が自生するそうです。

薬用としては壊疽やハンセン病の治療、解毒などに使われたそうですが、実はこの植物、猛毒を含むので取り扱いには注意が必要です。食用には野生アスパラに似た柔らかい新芽の部分のみを、必ずしっかり加熱して使います。
ちなみにホメオパシーで使われるブライオニア(ブリオニア)はこの植物の根だそうです(主に別品種のBryonia alba)。

2014年追記:植物の学名等に関しては本(下記参考文献)などでいろいろ調べて書いたのですが、どうやらアヴロニェスはDioscorea communis(Tamus communis)が正しいようです。和名はあるのか不明ですが、Dioscorea communisは英語でBlack bryonyと呼ばれるもので、Bryonia dioica(こちらはRed bryony)とはまた別の植物です。共にホメオパシーなど薬用として使われる場合があるものの、有毒なので食用にするには注意が必要。ギリシャでは普通にホルタ(食用の野草)として売られていますが、生では決して食べず、加熱して無毒化させます。

2009.02.26 omelet

今回買ったのはシンプルなオムレツにしてみました。
硬い部分を除いて綺麗に洗ったアヴロニェスと野生アスパラは適当な長さに折って、少しの水と一緒にフライパンへ。蓋をして蒸し、柔らかくなったら蓋を取って水分を飛ばします。そこにオリーブオイルと塩少々を加え軽く炒めたら、卵を流し入れて焼くだけ。この溶き卵には軽く塩胡椒と、隠し味のワインビネガーを数滴入れてあります。

アヴロニェスの他の調理法としては、茹でて温サラダに(味付けは塩、オリーブオイル、ワインビネガー、ニンニク微塵切り)、野生アスパラと合わせてスープに、肉やシーフードと合わせて煮込みに...など。値が張るのが難点ですが、結構好きな野草のひとつです。

2009.02.26 lunch

というわけで、上の2品を交えた2月26日のランチ。
他の料理はブログで見て気になっていたというフェタ唐辛子(「思ったより辛い!」という感想)、子供用のトマトソースパスタです。

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参考文献:"ΤΑ ΧΟΡΤΑ"(Εκδόσεις Τροχαλία, 1997) Μυρσίνη Λαμπράκη

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