ギリシャのごはん

ギリシャ料理のレシピと、ギリシャで私が作っているごはんの記録。

タグ:食文化

今年は3月後半の月曜がどちらも祝日でした。

2024.03.25a
移動祝日である復活祭に連動する大斎(断食期間)のはじまりが先週の月曜、そして昨日は毎年3月25日にお祝いされる生神女福音祭とギリシャ独立記念日(オスマン帝国の支配下にあったギリシャで革命が起き、独立戦争を開始したことを記念する日)。

動物性の食品を摂らない断食期間中には魚も禁止食品に含まれるのですが、特別に魚食が許される2日のうちの1日が生神女福音祭なのです。特に干し鱈のフライにガーリックソースを添えた「バカリァロス・スコルダリァ」が定番。なぜ干し鱈を食べるのが伝統なのかというのは以前にも何度か書いていますが、流通が発達していなかった時代において、干し鱈はギリシャ中どこでも入手しやすい魚だったというのが大きな理由でしょう。

ギリシャで長く暮らしていて気付いたのが、似たテーマの記念日と料理のイメージが結びついたのか、近年はオヒ・デー(第二次世界大戦への参戦を記念する日)や生神女就寝祭(聖母マリアの永眠を記憶する日)にもバカリァロス・スコルダリァを食べる人が増えているらしいことです。おかげでスーパーの特売品に干し鱈を見かける回数も増えたので助かりますが。

我が家ではフライ以外の干し鱈料理を作ったりする方がどちらかというと多いのだけど、今年は久々に超ベーシックなバカリァロス・スコルダリァが食べたくなりました。


2024.03.22 garlic
関連記事のレシピに近いですが、炭酸水で小麦粉を溶いたシンプルな衣にくぐらせてサクッと揚げた干し鱈は、熱々にスコルダリァをたっぷりつけて食べると最高。スコルダリァは茹でたじゃがいもを主に、パンとアーモンドも少し加えたものにしました。今の時期は丁度、ジューシーな新にんにくが出てきたところなのでスコルダリァを作るのにもってこいです。


2024.03.25b
バカリァロス・スコルダリァと一緒によく食べられるのがビーツのサラダです。ギリシャでは、ビーツは葉付きで売られているのがうれしい。根はオーブン焼きまたは茹で、葉も別に茹でるのですが、このサラダにもスコルダリァをつけながら食べるととてもおいしいので、ぜひこの組み合わせでお試しを。スコルダリァはたっぷり添えるのがおすすめです。


【関連記事】




ギリシャごはん普及活動に、ご協力お願いします
にほんブログ村 料理ブログ 各国料理(レシピ)へ
人気blogランキングへ

昨日はカサリ・デフテラといって、復活祭に向けての長い断食期間であるメガリ・テサラコスティ(サラコスティ)のはじまりの日でした。

2024.03.18
ギリシャでは祝日なので、みんなで集まって食事をしたり、凧揚げやピクニックに出かけたり楽しく過ごします。ギリシャ正教の断食メニューは動物性のものや血の出る魚は食べないけれど、その他のシーフードは食べて大丈夫なので、特に初日かつ祝日であるこの日は奮発してテーブルがご馳走で埋め尽くされるというのも珍しくありません。

うちは私以外みんなシーフードが苦手なので、毎年自分が食べたいものでやらせてもらってます。去年は油抜き断食メニューで節制を心がけたテーマにしたけど、今回は久々にタコを食べたくなって先週のうちに買ってあったのでした。手元にあった食材たちとあわせて形になったメニューはこちら。

・タコとハネムスカリ球根の土鍋焼き
・乾燥そら豆のミント風味煮込み
・ハネムスカリ球根のホイル焼き
・タラモサラタ
・ルピーニ、オリーブ、トマト、ルッコラ
・きゅうりのビネガーがけとケイパー
・ラガナ(本来は発酵させてない平焼きパン)
・りんごとヘーゼルナッツ入りセモリナ粉のハルヴァ

ギリシャにキリスト教が入ってくるずっと前から食べられていた食材がほとんどとなっています。たとえば先日も載せたハネムスカリ球根やルピーニ。これらは地方によっては断食期間によく食べられるものだったりもします。

シーフードはイカかタコかちょっと迷って、甲イカの墨煮かそれを使った真っ黒なピラフにかなり心が傾いていたのだけど、昔作ったタコとハネムスカリ球根の煮込みをトマトに頼らずもう一度作りたくなったのです。結局そこからまた少し違うことを思いつき、土鍋焼きになりましたが。長くなるので球根を使った2品についての詳細はまた後日。


2024.03.18 broad bean stew
乾燥そら豆は、先日の料理に使った残り。同じくクレタ島の料理で、ミントを加えた煮込みを昔作った記憶が蘇ってきました。元の料理をどこで見たのか思い出せないのでうろ覚えですが、玉ねぎやトマトを炒めたところに一度茹でこぼしたそら豆を加え煮、最後の方で刻んだミントを加えます。

ラガナという平たくて大きなパンと並んで、カサリ・デフテラには欠かせないタラモサラタ。去年考えたノンオイルのもよかったなぁと思いつつ、ベーシックにパンをつなぎにしたタイプのを作りました。

オリーブ、トマト、ルッコラと一緒のお皿に盛り付けた黄色い豆はルピナスの種子であるルピーニ(ルピナ)。ルピーニは現代のギリシャではそれほど食べられるものではなく、アテネでは品揃えのいい乾物屋さんなどで売っています。ペロポニソス半島のラコニアやクレタ島では断食期間によく食べるそう。特に厳しく節制をする日には乾パンやナッツ、ほとんど手を加えない野菜といったものだけ口にするのですが、ルピーニもそんな質素な食べもののひとつです。

お菓子はセモリナ粉のハルヴァにしました。ハルヴァと呼ばれるお菓子はいろんな種類があり、いずれも断食期間中によく食べられるもの。カサリ・デフテラにはごまペースト(タヒニ)で作ったサクサク・ほろほろ食感で口どけのいいヌガーの仲間のようなタイプが特にポピュラーな気がしますが、最近ごまやタヒニを食べ過ぎだったので。ごまペーストのハルヴァとは全然違う感じのお菓子ですが、セモリナ粉の粒感とほろっとした食感で日本のお菓子にも似たものがあったような、なんとなく懐かしい味わいです。


【関連記事】








ギリシャごはん普及活動に、ご協力お願いします
にほんブログ村 料理ブログ 各国料理(レシピ)へ
人気blogランキングへ

カーニバルシーズンが終わり、復活祭に向けての長い節制の期間「メガリ・サラコスティ」が昨日から始まりました。

2023.02.27a
初日であるカサラ・デフテラ(クリーンマンデー、清浄な月曜日の意味)は、多くの人にとってまだお祭り気分が残っている楽しい日。ギリシャ正教の断食・節食では魚以外のシーフードは食べていいので、それらを使ったご馳走を囲んでにぎやかに過ごします。

また、ピクニックをしたり凧揚げをして遊ぶ風習もあり、野山や海辺へ出かける人も多いです。アテネの中心エリアでは、アクロポリス周辺が毎年かなりの人出となり、ライブ演奏やダンスも催されます。

我が家はというと、私以外はみんなシーフードが苦手。普段あまり食卓に上らないシーフードを食べるチャンス!と、ここぞとばかりに私が張り切るイベントになりがちなのですが、今年はちょっと趣向を変えて、ごくシンプルなメニューにしてみました。

本来、この日は油やお酒も抜きの厳しい節食の日だそうで、たぶん修道院ではそのような食事をされていると思います。シーフードは使えるけど、行事に便乗して値上がってたりもするし、他の日に食べればいいかな……ということでタラマ(塩辛いたらこのような魚卵ペースト)だけ。

最近あらためてギリシャ正教の断食について勉強してたこともあり、油抜きのメニューを考えました。

・ラガナ(ごまをまぶした大きな平焼きパン)
・タラモサラタ
・ファソラーダ(白いんげん豆のスープ)
・ビーツのにんにくビネガー和え
・自家製オリーブ3種
・ルッコラ
・ミックス野菜のピクルス(市販品)
・ごまのハルヴァ(市販品)


まずカサラ・デフテラに欠かせないのが、ラガナという大きくて平たいパンとタラマです。ラガナの由来はユダヤ教で過ぎ越しの祝いに食べられるマッツァと同じで、イスラエル人がエジプトを脱出する時にパンを発酵させる時間がなかったことから、パン種を使わないとされます。マッツァと違いギリシャのラガナについては、少なくとも現代に食べられているものはイーストで発酵させていて普通のパン生地と変わらないのですが、あまり膨らまないよう平たく押さえる成形にその名残があります。

カサラ・デフテラにはどこのパン屋でもラガナが大量に焼かれ飛ぶように売れるものですが、買いに出かけるのも面倒なので私は手作り派。自作すると安上がりなのもいいです。


2023.02.27b
ラガナをちぎってタラモサラタをたっぷりつけて食べるのがとてもおいしいのですが、ここで問題。“油抜き”メニューにすると決めたので、オイルたっぷりのタラモサラタはいいものかというのがちょっと気になってきました。

実は“油抜き”に関してはふたつの解釈があり、オリーブオイルは禁止だけど他の油(ひまわり油、コーン油など)やマーガリンは使えると言う人もいます。それらをふんだんに使っていたら、節制の意味はあまりないような…...。うちのタラモサラタはオリーブオイルよりもニュートラルな味のひまわり油などをいつも使っているので、オリーブオイルのみ禁止という解釈に従えば問題ないのですが。

先に書いた理由から“油抜き”を徹底してみたくなり、タラマはそのままで出すつもりでしたが、ふと「ノンオイルのタラモサラタ」を思いついたので作ってみました。これが我ながらなかなかおいしくできたので、記事最後にレシピを書いておきます。普通のタラモサラタよりカロリーも少しおさえめなので、ぜひお試しください。


2023.02.27c
他のメニューについて。ファソラーダ(白いんげん豆のスープ)は、豆料理全般の中でもカサラ・デフテラによく食べられる定番。夫の友人のお母さんであるポリさんが作っていた、ピリッと辛いノンオイルの豆スープをお手本にしています。

オリーブは小さなグリーンオリーブのペットボトル漬け、ビネガー風味のカラマタオリーブ、塩だけで漬けたブラックオリーブと全て自作。

ビーツは市販の真空パックの茹でビーツを切って、ワインビネガーとにんにくで和えただけ。ピクルスとごまのハルヴァも市販品で、頑張りすぎないというのももうひとつのテーマでした。


【メガリ・サラコスティについて】
ギリシャ正教で一番重要視される行事である復活祭を前に、長い節制と祈りの生活を送る期間。ギリシャ語ではメガリ・サラコスティまたはテッサラコスティ、日本語では大斎(おおものいみ)。
サラコスティという名前の由来は、キリストが荒野で行った40日間の断食にならったもので、元々は復活祭直前の週であるメガリ・エヴゾマダ(受難週間、聖週間)と3月25日の生神女福音祭(この日は魚食が許される)は数えていなかったため40日間とされました。その後メガリ・エヴゾマダとその始まり(一週間は日曜から数えるため)である棕櫚の日曜日(この日も魚食が許される)も含むようになったため実質48日間となります。


2023.02.27d
ノンオイル・タラモサラタ(タラモサラタ・アラドティ)

材料:(約2/3カップ/約140g分)
リーンなパンの白い部分...20g(ひと切れ分)
アーモンド(皮なし)...25g(ひとつかみ)
タラマ...30g(約大さじ2)
玉ねぎ...25g
レモン汁...大さじ1

パンは水に浸けてふやかし、ごく軽く水気を絞る。

すべての材料をフードミルかフードプロセッサーに入れて、クリーミーな状態になるまでよく混ぜる。途中、必要なら水を少量加えて濃度を調整する。

時間があれば冷蔵庫で1〜2時間置いて味をなじませる。

2023.02.27e
2023.02.27f
2023.02.27g


MEMO:レストランで出されるひと皿分ぐらいの量ですが、大きなフードプロセッサーだと倍量以上でないと混ぜにくいです。
アーモンドの代わりにカシューナッツを使っても。
フードプロセッサーがない場合、ホールアーモンドの代わりにアーモンドプードルを使い、玉ねぎは細かくすりおろして加えるとすり鉢で作れます。また、アーモンドバターで作ってもいいと思います。
日本のたらこを使う場合は塩気が少ないので、必要なら塩で味をととのえます。


ギリシャごはん普及活動に、ご協力お願いします
にほんブログ村 料理ブログ 各国料理(レシピ)へ
人気blogランキングへ

昼ごはんを食べるつもりはなかったのだけど、急遽パスタ。

2022.11.08 pasta
漁船から下ろしたてのを直接買うならともかく、アテネの市場どころかスーパーで売ってたシャコなんてギャンブルにもならない負け戦なんですが……どうしてもスルーできない時ってありますよね。

近所のスーパーへ買い物に行ったら、今まで見た中では一番鮮度がよさそうなシャコが。しかも大きめサイズだったので、身が縮んでてもスカスカではなさそう。

「これ、身は入ってますかね?」

「どうだろうね?入荷されたところではあるけど」

鮮魚コーナーのおじさんとこんなやりとりの後、ひとつかみだけ買ってきました。

ちなみにシャコはギリシャ語でザヴォガリデス(バカエビ?)というのですが、プシレス(シラミ)や、カツァリデス(ゴキブリ)という別名も。散々な呼ばれようです。普段から“エビは海のG”だと主張している夫は喜びそうだけど。
いつも思うのだけど、虫に近かったりグロテスクな見た目の生き物も、海に住んでると食べ物として割とすんなり受け入れられるのが面白いですね。


IMG_20221108_134442
シャコの鮮度がこれ以上落ちるといけないので、すぐに取り掛かります。
身は綺麗に外れないだろうから、むしってパスタかピラフィ(見た目がどちらかと言うとリゾットのようなしっとりピラフ)にしよう。すぐできるのはやっぱりパスタだな〜ということで、ギリシャのスタンダードなシーフードパスタという感じのトマト味にしました。

結果を言うと、パスタは旨味たっぷりでとてもおいしく仕上がりました。
大きいシャコは結構しっかり身が入ってたけど、小さいのはちょっとボロボロだったから、大きいのばかり選ってもらうべきだったな……というのが本日得た教訓。


ギリシャごはん普及活動に、ご協力お願いします
にほんブログ村 料理ブログ 各国料理(レシピ)へ
人気blogランキングへ

いよいよパスハ(イースター)が近づいてきました。

2022.03.25 lazarakia1
ギリシャ正教では来週いよいよ受難週間(聖週間)に入りますが、その初日である聖枝祭の前日がラザロの土曜日です。この日はキリストが起こした奇跡により友人のラザロが死から蘇ったことを記憶する日。ラザロの土曜日の習慣はさまざまですが、一部の地方ではラザラキァ(小さいラザロ)と呼ばれるパンを食べます。

2022.03.25 lazarakia4
布でぐるぐる巻きにされたラザロの姿を模したパンは、ちょっとユーモラスで惹かれるものがあります。作り手によって可愛らしく仕上がったり、どちらかと言うと不気味だったり。

生地そのものはこれと決まっていないのですが、断食期間中なので動物性の材料が入らないのが鉄則。ラザラキァは子供たちが喜んで食べるパンで、甘い生地にする場合が多く、シナモンやマスティハなどスパイスが香ります。

ギリシャごはんに誘われてアテネへ

我が家のラザラキァは、以前出させていただいたこちらの本にレシピを載せています。
※絶版なので価格が高い場合があります。掲載してるお店情報などは古いですが、内容はエッセイ&レシピ中心なので興味のある方は読んでみてください。


1647239240383
ラザラキァのページ。レシピは簡単に4体できる分割にしてますが、サイズ的には6体にした方がおすすめです。


2022.03.25 lazarakia2
今回は掲載レシピとは少し違った配合にし、生地に使ったスパイスはシナモン、カルダモン、マスティハ。フィリング入りで作るのが好きなのですが、定番のレーズンやくるみではなくて完全オリジナルでココナッツ入りにしました(ただ単にココナッツしかなかった)。


2022.03.25 lazarakia3
目や口はクローブを刺して。私はちょっとごまもふりかけるのが好きです。


2022.03.25 lazarakia5
焼きあがりを割ってみたところ。
スパイス風味の生地にココナッツフィリングの相性もよく、とても好評でした。


ギリシャごはん普及活動に、ご協力お願いします
にほんブログ村 料理ブログ 各国料理(レシピ)へ
人気blogランキングへ



↑このページのトップヘ